研究概要 |
これまでの研究から,動物組織におけるコリン(エタノールアミン)キナーゼ(CKおよびEK)は少なくとも3種のアイソザイムとして存在することが実証されている.即ち,1つは肝型CK(50kDa),他の1つは腎型CK(42kDa)であり,この両者はconstitutive formsとして他の組織においても常に発現している.一方,第3番目のCK(EK)は,細胞の増殖刺激あるいは細胞障害性毒物の投与によって主として肝で新たに発現されてくる,いわゆる誘導型CK(EK)であり,このものの本体は現在まだ不明である. 最近,細胞増殖刺激の初期過程において,DNA合成の亢進に先だって細胞内CK(EK)の活性化(誘導)と,その反応産物であるホスホコリン(ホスホエタノールアミン)の蓄積が観察され,これらの産生を抑制するとDNA合成も亢進されない事実が明らかになった.この反応には恐らく誘導型CK(EK)が関与しており,またホスファチジルコリン(ホスファチジルエタノールアミン)の生合成とは直接関連していない.我々は誘導型CK(EK)の生理的役割を分子レベルで明らかにする目的で本酵素の純化を精力的に進めたが,他の2種のconstitutive CK(EK)に比べて本酵素は蛋白化学的に極めて不安定であり,現在までその均一化に成功していない.一方,肝型CK(EK)については,そのcDNAクローニングが成され推定一次構造も明らかとなった.そこで現在は腎型CK(EK)のcDNAクローニングを精力的に進めており,将来は肝型,腎型両酵素の一次構造上の類似点を利用して誘導型CK(EK)の遺伝子クローニングとその発現調節の解明を目指す計画である.
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