研究概要 |
申請者は、多環式芳香族炭化水素の解毒代謝に関わるアルドケト還元酵素について、種々の動物の組織で検討してきた。その過程において、3つのジヒドロジオール脱水素酵素[EC1.1.1.20]をウシ肝臓可溶性分画に見いだし、それぞれを精製した。基質特異性や阻害剤感受性及び免疫化学的な検討の結果、DD1及びDD2はそれぞれ3α-hydroxsteroid dehydrogenaseとaldehyde reductaseと同定された。しかし、3番目の酵素(DD3)は、基質特異性や阻害剤感受性及び免疫化学的の検討の結果、今まで報告のない新規な酵素であることが明らかになった。本酵素の部分アミノ酸配列から、酸化還元による酵素活性の制御に重要なシステイン残基が見いだされた。このアミノ酸配列を元にDNAプローブをPCR法で作成した。単離したDD3cDNAは、1339塩基対(323アミノ酸)からなっていた。このcDNAを発現ベクターpET28aに組み込みpET28a-dd3を構築した。この発現プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入してIPTGによりrecombinantタンパク質を誘導した。大量発現したタンパク質をNi++アフィニティーカラムで高純度かつ効率よく精製した。この方法に準じてmega primer PCR法で点変異を導入した変異体を精製した。9つの変異体(D50N,Y55F,Y55H,K84N,H117Q,H117Y,Y55F+H117Q,C145S and C193S)の基質特異性や阻害剤感受性の結果から、これら変異を導入したアミノ酸は、活性発現に重要な役割を有することが示唆された。また、コンピューターによる立体構造の推定から典型的なα8,β8-barrel structureを持っており、Asp-50,Tyr-55,Lys-84,His-117及びCys-193は、barrelの中にそしてCys-145は表在性であることが分かった。
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