研究課題/領域番号 |
08672511
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 晋作 大阪大学, 薬学部, 講師 (70207728)
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研究分担者 |
堤 康央 大阪大学, 薬学部, 助手 (50263306)
真弓 忠範 大阪大学, 薬学部, 教授 (00098485)
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キーワード | Interleukin-6 / Cytokine therapy / Bioconjugation / Drug Delivery System / Tumor Necrosis Factor |
研究概要 |
近年の遺伝子工学技術の格段の進歩も相俟って、Interleukin-6(IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF-α)などのサイトカインを「夢の薬」として適用しようとする試みが注目されている。しかし一般に、サイトカインは体内安定性に極めて乏しく、臨床応用する際には、大量頻回投与を余儀なくされ、重篤な副作用を招いてしまっている。そのうえ、サイトカインは、同一レセプターを介した場合でさえ、多様なin vivo生理作用を発現するため、副作用制御が極度に困難である。そのため現状では、サイトカインの臨床応用は極端に制限されていると言わざるを得ない。以上の問題はサイトカインに限らず、近年大量生産可能となった数多くの生理活性蛋白質にも当てはまることである。従って、次世代のタンパク性製剤を創製するには、体内安定性を向上させ得る適切なDDSの開発とともに、サイトカインの多様なin vivo生理作用の中から目的とする治療作用と副作用とを選択分離出来る創薬技術の開拓が急務となっている。さて、現在の癌化学療法は、確かに著明な抗腫瘍効果を期待できる一方、骨髄抑制に伴う血小板減少症のために、これまで期待されたほどの成果は得られていない。そのうえ未だ血小板減少症に有効な薬物はなく、この血小板減少症を克服することが癌化学療法の命運を担っているといっても過言ではない。近年IL-6が、血小板産生を促進することが見出され、その早期臨床応用が待望されているが、前述の理由のためIL-6の臨床応用は殆ど進展していない。そこで、IL-6をモデルサイトカインとして用い、Bioconjugationによるサイトカイン療法の最適化を図った。その結果、IL-6を最適条件でBioconjugationすることで、体内安定性を100倍以上にも向上できることが明らかとなり、さらに目的の作用である血小板産生作用と副作用とを選択分離し得ることが示唆された(このBioconjugationによる作用の選択性賦与に関しては来年度以降、詳細に検討していく予定である)。また検討範囲を広げた結果、TNF-αにおいても、最適条件でBioconjugationすることで、抗腫瘍効果と副作用を選択分離し得ることが明らかとなりつつある。このBioconjugationによるサイトカインへの作用の選択性賦与は、作用の点でのTargetingと位置付けられ、今後のサイトカイン療法の発展に大きく寄与するものと期待される。
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