[目的]本研究では血液凝固・繊溶反応に対する希土類金属の影響を検討し、肺塞栓モデルマウスに対する抗血栓作用を試みた。[方法]希土類金属の抗凝固作用は、各種金属イオン存在下あるいは非存在下でヒト正常血漿にカオリン又はトロンボプラスチン(組織因子)またはXa因子に加え、Ca^<2+>ーリン脂質を添加して、それぞれの凝固時間を測定することにより検定した。この方法によって、内因系、外因系及びXa因子誘導の血液凝固反応に対する希土類金属の影響を検討した。次に、血液凝固カスケード中の各因子の持つ酵素活性に対する影響はMCA基質を用いて調べた。また、肺塞栓モデルマウスは尾静脈より、30〜40mg/kgのリオプラスチン(組織因子、リン脂質を含む)を投与することによって作成するが、これに対する希土類金属の影響を検討した。 [結果・考察]希土類金属はカオリン、トロンボプラスチン、またはXa因子によって誘導される血液凝固時間を延長させ、中でもLa^<3+>、Ce^<3+>、Nd^<3+>、Sm^<3+>など軽希土類に分類される金属が相対的に強い作用を示した。次に、希土類金属は血液凝固カスケード中の各因子の酵素活性を強く阻害し、この場合においても軽希土類が相対的に強い作用を示した。La^<3+>及びCe^<3+>は肺塞栓モデルマウス作成に際し、それらの抗血栓作用により延命効果を示した。
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