【目的】希土類金属はセラミックス、超伝導体、磁性材料及び螢光体として優れた性質をもつことから電子工業、窯業、カラーテレビ、冶金、等に利用されている。しかし、その生体影響に関する研究は比較的少ない。そこで本研究ではCa^<2+>を必須とする血液凝固・繊溶系に対する希土類金属の影響を検討した。 【方法】血液凝固系に対する希土類金属の影響は、まず各種金属イオン存在下、ヒト血漿を用い、内因系及び外因系強固機序による凝固時間を測定することによって検討した。内因系はCa^<2+>-カオリン、外因系は組織因子によって凝固反応を誘導し、それぞれ凝固時間を測定した。また、両系に共通するXa因子誘導の凝固時間も同様にして測定した。各凝固因子または繊溶系活性化因子のプラスミン及びウロキナーゼの活性に対する影響はそれぞれに特異的なペプチジル-MCA基質を用いて、希土類金属存在下で酵素活性を測定することにより検討した。次に、肺塞栓モデルマウスに対する希土類金属の効果は、先ず、各濃度の金属イオンを各々尾静脈内投与し、5分後に組織因子を尾静脈内に投与し、その症状から効果を判定し、24時間後における死亡率を算出することにより検討した。 【結果・考察】希土類金属はカオリン、組織因子、Xa因子によって誘導される凝固時間を延長させ、中でもLa^<3+>、Ce^<3+>、Nd^<3+>等Ca^<2+>とイオン半径が近い軽希土類に分類される金属が相対的に強い作用を示した。また、プロトロンビナーゼによりトロンビン形成を強く阻害した。更に、希土類金属はXa因子、トロンビンのみならずプラスミン及びウロキナーゼ活性も阻害した。また、La^<3+>、Ce^<3+>はin vivoにおける外因系凝固による肺塞栓の形成を阻害し、死亡率を低下させた。
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