平成8年度はモルモット気管から単離した平滑筋細胞を、サポニンの一種(β-エスシン)によりスキンド細胞とし、細胞内のイオン環境を変えられる状況下でオンセルパッチクランプにより大コンダクタンスClチャネルを記録することに成功した。この実験には購入した水圧式微動マニピュレーターが不可欠であった。このチャネルは細胞内外のCl濃度が140mMの時、約300pSと非常に大きなコンダクタンスを持ち、その活性が細胞内Ca濃度に依存していた。一定の浸透圧下でスキンド細胞でも観察されたことから浸透圧感受性Clチャネルとは異なるものと思われる。摘出パッチでチャネル活性を観察すると一定のCa^<2+>濃度においてもrun-downが生じ、数分以内に活性が消失したので、Ca^<2+>以外に活性化あるいは活性維持に必要な細胞内因子が存在すると考えられる。一方、細胞全体から巨視的電流として観察されるCa依存性Cl電流のノイズレベルは低いので、この大コンダクタンスClチャネルが主なClチャネルではない可能性が高い。小コンダクタンスClチャネルの記録も現在検討しつつある。 また、細胞全体から巨視的電流として観察されるCa依存性Cl電流の活性化機序について検討し、各種蛋白リン酸化酵素(カルモジュリン依存性、c-AMP依存性、c-GMP依存性、チロシン)の活性化によるチャネル蛋白に燐酸化が直接的に必要ではないことを明らかにした。しかし、活性化されたCl電流の減少にはATPが必要なためCaポンプの活性維持が不可欠であるか、あるいはチャネル蛋白のリン酸化が必要であると思われる。
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