単離したモルモット気管平滑筋細胞において脱分極あるいはcaffeineによって生じるCa^<2+>依存性Cl^-電流の活性化・不活性化の時間依存性とCa^<2+>依存性をCa^<2+>依存性K^+電流と比較検討した。これらのうちK^+電流はCl^-電流よりも活性化が早く、電位が一定ならば活性化は細胞膜直下のCa^<2+>濃度上昇にのみ依存しており、時間依存性はないと推測された。一方、Cl^-電流の活性化には時間依存性が観察された。さらに細胞内Ca^<2+>動態の画像解析と膜電流測定を同時に行うことを試みた。indo-1あるいはfluo-3をwhole-cell clamp様パッチピペット内から細胞内へ単純拡散で導入し、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(Nikon ;RCM-8000)により画像を取得した。Cl^-電流の活性化は平均としての細胞内Ca^<2+>濃度上昇と比べても僅かに(百ミリ秒程度)遅れる場合が多いことが明らかとなった。気管平滑筋Cl^-電流の不活性化にカルモジュリン依存性蛋白燐酸化酵素によるチャネルのリン酸化が関与していることを他の研究者がごく最近報告している。活性化機構も時間的な観点からCa^<2+>による直接作用だけでは説明が困難かもしれないが、少なくとも各種蛋白燐酸化酵素の関与の可能性は薬理学的実験結果から低いと思われる。さらにCa^<2+>依存性Cl^-電流を担う単一イオンチャネル電流の観測を試みたが、inside-outの状態では活性が見られない場合が多いので、細胞内情報伝達系を保持したまま細胞膜に小孔を開け、細胞内Ca^<2+>濃度を制御する系においてon-cell patch clampを試みた。この結果、大コンダクタンスのCa^<2+>依存性Cl^-チャネルの活性を認めた。巨視的電流から予測された単一チャネル電流とは性質が異なることから、このチャネル以外に、よりコンダクタンスの小さなCa^<2+>依存性Cl^-チャネルが存在するものと思われる。
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