平成9年度にはモルモット気管平滑筋から単離した細胞において、細胞内Ca^<2+>動態の画像解析と膜電流測定を同時に行うことを試みた。indo-1あるいはfluo-3をwhole-cell clamp用パッチピペット内から細胞内へ単純拡散で導入し、共焦点レーザー蛍光顕微鏡(Nikon;RCM-8000)により画像を取得した。acetylcholine(ACh)やhistamine(His)を加えることにより細胞内Ca^<2+>濃度の振動にほぼ同期してCa^<2+>依存性Cl^-電流の振動が観察された。またcaffeineによっても細胞内Ca^<2+>濃度上昇と伴にCa^<2+>依存性Cl^-電流が発生したが、それらの振動は殆ど観察されなかった。一方、細胞内Ca^<2+>濃度上昇によりCa^<2+>依存性K^+電流はCl^-電流に比べより早く活性化された。大コンダクタンスCa^<2+>依存性K^+電流の活性化は、電位が一定の場合において細胞膜直下のCa^<2+>濃度上昇にのみ依存しており、時間依存性はないと推測される。一方、Cl^-電流の活性化には時間依存性が観察され、平均としての細胞内Ca^<2+>濃度上昇と比べても僅かに(百ミリ秒程度)遅れる場合が多いことが明らかとなった。Cl^-電流の不活性化にカルモジュリン依存性蛋白燐酸化酵素によるチャネルのリン酸化が関与していることが他の研究者によりごく最近報告されている。活性化機構も時間的な観点からCa^<2+>による直接作用だけでは説明が困難かもしれないが、少なくとも各種蛋白燐酸化酵素の関与の可能性は薬理学的実験結果から低いと思われる。
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