肝臓、腎臓中でclassical glutathione peroxidase(cGPx)活性が著しく低いモルモットにおいて、他のどのようなセレン蛋白質が発現しているのか検討した。肝臓、腎臓中のセレン蛋白質を^<75>Seでin vivoで標識し、SDS-PAGEで分離したところ、肝臓ではphospholipid hydroperoxide glutathione peroxidase (PHGPx)と思われる分子量18kDaのセレン蛋白質のバンドが最も強く標識された。そこで、この蛋白質を2次元電気泳動、カラムクロマトグラフィー等で分離したところ、確かにPHGPx活性を持つ蛋白質であることを確認した。さらに、肝臓のmRNAを用い、ラットのPHGPxの配列を元に作製したprimerでRT-PCRを行ったところ、PHGPxのbandが増幅されたので、増幅されたcDNAを切り出してその塩基配列を決定したところ、ラットのPHGPxと98%の相同性を持つことがわかった。従って、cGPx遺伝子がほとんど発現していないモルモットの肝臓中においても、PHGPx遺伝子は発現し、活性を持つ蛋白質として18kDaのPHGPxが存在していること、他の動物種とは異なり、モルモットの肝臓中ではPHGPxが主要なセレン蛋白質であること、が明らかになった。このPHGPxの活性はセレン欠乏時に他のセレン蛋白質の活性が減少しているときにもほとんど減少せず、セレン欠乏時に体内に取り込まれたわずかなセレンは積極的にPHGPxに利用されることも明らかになった。一方、腎臓ホモジネートのSDS-PAGE分析によって、腎臓中には22kDaの未知のセレン蛋白質が存在している可能性が示された。そこで、この蛋白質の性状を解析したところ、cGPxの単量体と分子量は近いが等電点が異なること、しかし、cGPx同様4量体を形成している可能性が高いこと、などがわかった。また、同様のセレン蛋白質がラットの肝臓中にも存在する可能性が示唆された。この蛋白質の性状については、さらに今後検討する必要性がある。
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