てんかん欠神様発作症状を誘発させることが示されているγ-ヒドロキシ酪酸(GHB)による核内cyclic AMP responsive element(CRE)およびactivator protein 1(AP-1)DNA結合活性上昇における細胞内Ca^<2+>の役割を神経細胞初代培養系を用いて検討するとともに各種転写調節因子の抗体を用いてDNA結合活性上昇に関与する転写調節因子を同定した。マウス小脳顆粒細胞初代培養系において、核内CREおよびAP-1 DNA結合活性は、細胞を1mM GHBで60分間処置することにより上昇したが、両DNA結合活性の上昇は、GABA_BアンタゴニストであるCGP35348およびCGP55845により拮抗された。また、細胞内Ca^<2+>キレート剤であるBAPTA-AMまたは小胞体のCa^<2+>-ATPase阻害薬であるthapsigarginの前処置によりGHBによる両DNA結合活性上昇は認められなくなった。さらに、カルモジュリンキナーゼIIの阻害薬であるKN-62やKN-93の前処置によっても両DNA結合活性上昇は抑制された。各種転写調節因子の抗体の影響を調べたところ、CRE結合活性は、CRE binding protein(CREB)抗体でスーパーシフトが認められた。また、リン酸化CREB抗体によりCRE結合は抑制された。一方、AP-1 DNA結合活性は、c-Fos、c-Jun抗体によりバンドが消失した。以上より、GHBは、GABA_B受容体を介し、細胞内貯蔵部位からCa^<2+>を遊離させること、また、このCa^<2+>動員が核内CREおよびAP-1 DNA結合活性上昇に重要な役割を演じていることが示唆された。また、GHBによるCRE結合活性の上昇には、リン酸化CREBが関与しており、そのリン酸化にはカルモジュリンキナーゼIIが関与していることが示唆された。
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