HDCの酵素活性レベルでの調節機構を明らかにするために74kDaHDCをバキュロウイルス-昆虫細胞系ら発現させたものを用いて、HDC酵素活性、及び分子量変化の両面から検討した。リコンビナント74kDaHDCを基質とし、ブタ膵臓エラスターゼでこれを処理した反応液を、超遠心により沈殿画分と上清画分とにわけて調べたところ、上昇したHDC活性は上清画分に回収されることがわかった。そこで、この沈殿画分、上清画分をそれぞれSDS-電気泳動で分離し、ウェスタンブロット法により解析したところ、沈殿画分に存在する74kDaHDCはエラスターゼ処理により54kDaの分子種に変化し、しかも可溶性画分に遊離していることが判明した。また遊離した酵素をゲル濾過により解析したところ、我々が癌化肥満細胞から精製したHDCと同じくダイマーを形成していることがわかった。さらに、リコンビナント74kDaHDCの代わりに、マウス胃の沈殿画分を用いて同じ条件下でエラスターゼ処理実験を行ったところ、HDC活性の上昇、可溶性画分への移行、54kDa分子種の生成が同様に認められた。以上の結果は、不溶性の74kDa分子種として翻訳されたHDCがエラスターゼ様の基質特異性を持つプロテアーゼにより、活性、局在性の調節を受けている可能性を示唆するものである。予備的な検討の結果、マウスの胃にプロセシング酵素の候補を検出し、その活性がストレスなどの刺激により変動することを見いだしているため、さらに検討をすすめる予定である。癌化肥満細胞の抽出液のプロセシング活性は、この細胞が高HDC活性を保有しているため、その性質の検討にまでは至っていないが、今後、阻害剤等を検討することにより、in vitroのプロセシング系の再現を試みる予定である。
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