研究課題/領域番号 |
08672545
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
米田 幸雄 摂南大学, 薬学部, 助教授 (50094454)
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研究分担者 |
荻田 喜代一 摂南大学, 薬学部, 助手 (90169219)
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キーワード | グルタメイト / NMDA / 転写制御因子 / ゲルシフトアッセイ / ロイシンジッパー / 亜鉛フィンガー / DNA結合能 / リン酸化 |
研究概要 |
記憶や学習など、中枢神経系神経回路の長期固定メカニズムを追究するために、可塑性形成プロセスに深く関与するグルタメイトシグナルによる蛋白質新規生合成変化を検討した。真核細胞では、蛋白質の新規生合成は遺伝子転写レベルでの制御を受ける場合が多いので、細胞核内で遺伝子DNAからmRNAへの転写を調節する転写制御因子のDNA結合能をゲルシフトアッセイにより測定した。その結果、ロイシンジッパ一型転写制御因子の一つであるactivator protein-1(AP1)のDNA結合能が、グルタメイトアゴニストのN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)の末梢投与2時間後では、マウス脳海馬内で著明に増強されることが判明した。この増強は海馬に選択的な現象であり、他の脳内部位ではNMDA投与はAPI結合に対してほとんど著明な影響を与えなかった。また、このNMDA投与後のAPI結合能上昇は一過性であり、投与4時間後には結合能上昇は認められなかった。その後、投与24時間後まで経時変化を追究したが、いずれの測定時間でもNMDA投与に伴う有意なAPI結合能変化は見出せなかった。さらに、他のロイシンジッパー型転写制御因子であるcyclic AMP response element binding protein(CREB)やc-MycのDNA結合能ばかりでなく、亜鉛フィンガー型転写制御因子のSp1、Zif268、YY1およびglucocorticoid response element bindingのDNA結合能に対しても、NMDA投与は著変を与えなかった。これらのDNA結合能のみならず、CREBの転写調節活性を決定する133番目セリン残基のリン酸化についても、NMDA投与に伴う著しい変動は観察されなかった。したがって、NMDAシグナルは海馬AP1へ一過性かつ選択的にシグナリングされるものと推察される。
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