1.発現様式の同じDNAポリメラーゼα/プライマーゼ複合体の4つのサブユニットの転写制御領域の解析 4つのサブユニットの転写制御領域1kbには、いずれもTATAボックスは存在せず、Sp1、E2F、AP1など既知の転写因子の結合配列が存在している。また、各上流域の配列を比較したところ、比較的長い共通配列が複数見出されている。このうち特にDNAポリメラーゼ活性を持つ分子量180kDaのサブユニットに関して、詳細な研究を行った。主要なプロモーター活性は、転写開始点から上流241bpまでの範囲にあった。この領域に存在する14bpのパリンドローム配列(-71)に変異を導入すると約50%、20bpのGCボックス(-112)に変異を導入すると、約30%プロモーター活性が減少することから、これらの配列がプロモーター活性に重要なシスエレメントであることが明らかになった。一方、遺伝子上流域をレポーター遺伝子とともにマウスNIH3T3細胞の同調系に導入したところ、レポーターとしてのルシフェラーゼ活性はDNA複製にわずかに先立って上昇し、mRNAレベルとほぼ同じ変動レベルを示した。したがって、増殖刺激に伴うmRNAレベルや蛋白レベルの増加は、少なくともその一部が、転写レベルの増加に起因するものと考えられた。また、-30から+45までの領域を欠失させると、増殖刺激による誘導は見られなくなったことから、この領域が増殖刺激に対する応答に必要であることが示唆された。 2.転写に必要な領域に結合する因子の同定 14bpのパリンドローム配列(-71)および20bpのGCボックス(-112)に特異的の結合するは蛋白質が、核抽出液中に存在していることを、ゲルシフトアッセイにて確認した。また、増殖刺激に対する応答に必要な領域にも特異的に結合する蛋白質が存在しており、その領域の塩基配列よりE2Fであることが示唆された。
|