動物細胞のグルコース輸送系はヒト疾患とも密接に関連した重要な細胞膜機能の1つであり、細胞膜に存在する分子量約50kDaのグルコース輸送タンパク質により調節されている。我々は、造腫瘍性の異なるヒト融合がん細胞株の解析より、ヒトがん細胞におけるGLUT1の糖鎖構造異常とグルコース親和性の増加をはじめて報告し、更に11番染色体の新規癌抑制遺伝子との密接な関連を明らかにした。そこで、本年度は糖輸送タンパク質の糖鎖変化とヒトがん病態に関する分子調節機構について、他のグルコース輸送タンパク質の発現に注目し更に解析した。その結果、HeLa細胞由来の非腫瘍性ヒト融合細胞系では糖輸送タンパク質として約50kDaのGLUT1のみを発現していたのに対し、癌抑制遺伝子の欠失により腫瘍性を獲得したHeLa融合細胞では、糖鎖修飾型のGLUT1に加え、GLUT3を発現していることを新たに見い出した。また、放射線照射により腫瘍性を獲得したHeLa融合細胞株においても、GLUT1の糖鎖修飾とともに、GLUT3の新規発現が共通に認められたことから、GLUT3発現における癌抑制遺伝子の関与が強く示唆された。腫瘍性ヒト融合細胞におけるグルコース親和性の増加とGLUT3発現の関連を更に検討中である。
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