研究概要 |
当該研究の研究目的は,がんの基本環境である低酸素下での低速増殖型低酸素性細胞の特性である亢進した還元代謝系が薬剤を活性化し,活性化された薬剤のみが低酸素性細胞を攻撃し,さらに,分化誘導・アポトーシス活性や血管新生阻害活性・転移抑制効果などの多機能性化により,がん細胞全体を死滅させる制がん剤の創製を目的とし,その分子設計,化学合成,さらに制がん活性を検討した.1.多機能性低酸素性細胞制がん剤の分子設計:分子設計として「活性機能発現素子」および「側鎖」の二つの部分を検討した.まず電子吸引性基,ニトロ基およびN-オキシド基を含有するイミダゾールやナフタレン環を母核として選び,最低非占軌道レベルを電子親和性の指標とする分子設計法で,「活性機能発現素子」を選択し,「側鎖」として血管新生阻害活性,転移抑制効果,分化誘導作用分子素子であるハロアセチルカルバモイル基,N-置換アミド基,γ-ヒドロキシ-α,β-不飽和エステル基を導入し,その生体内還元活性化に対する影響およびこれらの低酸素性細胞に対する薬理活性および抗がん活性発現を確認した.2.当該制がん剤の低酸素性がん細胞に対する活性分子設計・合成された多種の化合物をほ乳動物乳腺肉腫細胞EMT6/KUを用いて低酸素性細胞毒性を調べ,さらにCo60ガンマ線照射により低酸素型細胞放射線増感剤としての評価し,またラット肺内皮細胞RLEによる血管新生阻害活性,ヒト上皮性悪性腫瘍細胞HCT-116およびES-2による分化誘導・アポトーシス誘導活性,プロテアーゼ阻害活性を併せて調べin vitro系での総合的生物活性評価を行い,当該制がん剤候補物質としてTX-1830およびTX-1840シリーズ,さらにX-1877誘導体を選択した.
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