研究概要 |
特異な構造を持つピリミド[5,4-g]プテリジンN-オキシド類(1)は、極めて高度な光酸化能を有する。即ち、(1)は光励起下に、有機溶媒中では一電子移動過程を経て電子豊富な基質へ酸素原子を効率良く添加する一方、水溶液中では、効率良い水酸ラジカル発生剤として機能する。この光反応特性に基づき、(1)は極めて効率良いDNA鎖切断を惹起した。なお、(1)によるヌクレオシド類の光分解では、シチジン類が他のヌクレオシド類に比べて優先的に消費された。また、本反応系では、リボース体の方が2'-デオキシリボース体よりも効率良く消費され、対応する塩基部シトシンの遊離が観察された。これらの知見は、本反応系がRNA鎖中シチジン部での選択的な切断剤として利用できることを暗示しており、この方面への応用が期待される。なお、このようなシチジン類の特異な挙動は、核酸塩基部の化学反応性の違いに起因するものと推察される。一方、グアノシン類は本反応系で非常に低い反応性を示したが、水酸ラジカルによる8-ヒドロキシグアノシン類の生成という観点から、本研究における応用展開として検討を試みた。しかし本年度行った(1)とグアノシン類との光反応条件下では、対応する8-ヒドロキシグアノシン類の生成を確認するに至らなかった。本反応については、さらなる詳細な検討が必要である。
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