研究概要 |
Pyrimido[5,4-g]pteridine N-Oxide類(1)は極めて高度な光酸化能を有する。即ち、脂溶性を有する(1)の誘導体は光励起下に、有機溶媒中で酸化代謝酵素の活性酸素種(鉄オキセノイド)に酷似した機能を示し、また、水溶性を有する(1)の誘導体は光励起下に、水溶液中で水酸ラジカルを高効率に発生する。これらの知見を基に本研究では、効率良いDNA鎖切断剤を構築する目的で、(1)の反応性検討を行った結果、(1)へのインターカレータの装着は著しいDNA鎖切断能向上を招くことが判明した。また、(1)によるヌクレオシド類の光分解ではシチジン類塩基部が優先的に遊離することを見いだし、本反応系が効率良いシチジン選択的RNA鎖切断剤としても機能することを明らかにした。高純度な水酸ラジカルの効率良い発生法は、核酸をはじめとする生体物質の損傷研究に重要なばかりでなく、癌療法のための新規デザインを可能にする。それ故、(1)を用いる水酸ラジカル発生法はそれらの新機軸を開くものである。なお、(1)の誘導体は、通常の(光照射下ではない)条件下では、顕著な抗癌活性を示さない。 Furazano[3,4-d]pyrimidine N-オキシド類(2)には、構造の特徴から、(1)と類似した化学反応性が期待された。そこで本研究は、その簡便合成法を開発し、化学反応性を調べた結果、(2)は光照射下では非常に安定であるが、N-アシルシステアミン含有生理的条件下で一酸化窒素(NO)を効率よく放出することが判明した。それ故、(2)の気管支血管拡張作用は生体内で発生するNO由来と解釈できた。NOは、生体内で重要な役割を果たしている。しかし、それ自身は非常に不安定な気体であるため、その供与体の開発が注目されている。(2)は、誘導体合成が簡単であり、特定条件下でNOを発生することから、非常に便利なNO供与体となり得るので、その応用が期待できる。
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