研究概要 |
本研究は,合成免疫アジュバントとして化学的に純粋で,低毒性な免疫賦活作用を持つリピドA誘導体を用いることにより,臨床応用可能な合成癌,エイズワクチンの開発のための基礎研究を行うことを目的としている。今回,私はリピドAの免疫賦活作用に着目し合成研究を展開した結果,合成免疫アジュバンド部位として有望な応用性に富んだリピドA誘導体を見出した。さらに癌,エイズ関連抗原をスペーサーを介して結合させた同一分子内に免疫増強部位と抗原部位を持つ合成コンポーネントワクチンの創製に成功した。実験の概要を以下に示した。1)合成ワクチンのための効果的な合成免疫アジュバント増強活性部位の創製を目指してリピドA誘導体の合成を展開した。その結果リピドAの還元糖部分をアミノ酸(L-セリン>L-スレオニン>L-ホモセリン)にミミックしたN-アシルアミノ糖の中に強力な免疫活性をもつ化合物(L-セリン)を見出し,さらに抗原との結合のためのスペーサーとしてβ-アラニンを導入した化合物が,先の母骨格よりも強いマイトジェン活性を有することが分かった。また腫瘍特異的抗体の産生のために癌関連糖鎖抗原部位としてTn及びSialyl-Tn抗原,マウス白血病癌抗原ペプチド及びMAGE-3抗原ペプチドさらにHIVウィルスのV3ループ由来I-13ペプチド抗原の合成を行った。2)合成免疫アジュバント増強活性部位としてのリピドA誘導体と,癌,エイズ関連抗原とを結合させた化合物の合成に成功した。得られたコンジュゲート化合物は,リピドA誘導体と同程度もしくは強いマイトジェン活性が認められ,抗原特異的な免疫応答の増強が期待される可能性が示唆された。リピドA誘導体を免疫増強部位とする合成ワクチンの開発は,癌,エイズだけでなくインフルエンザやマラリアに対しても応用出来ることが考えられ,今後一層の研究により有効な合成ワクチンの開発が期待される。
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