グラム陰性細菌表層のリポ多糖体(LPS)の糖脂質部分であるリピドAは、内毒素の活性本体として、致死毒性、発熱原性、エンドトキシンショック等の有毒な作用を持つ一方、免疫賦活作用や抗腫瘍作用等の有用で多彩な生物活性を示すことから、生体応答調節物質として医療への応用が注目されている。本研究は、合成免疫アジュバントとして化学的に純粋で、毒性が低く、強い免疫賦活作用を持つリピドA誘導体を用いることにより、臨床応用可能な合成癌、エイズワクチンの開発のための基礎研究を行うことを目的としている。 1)本研究初年度に、本研究の代表者はリピドAの免疫賦活作用に着目し合成研究を展開した結果、リピドAの還元糖部分をアミノ酸(L-セリン、L-スレオニン、L-ホモセリン)にミミックしたN-アシルアミノ糖の中に強力な免疫活性(L-セリン、L-スレオニン、L-ホモセリン)をもつ化合物を見いだすことが出来た。次に最も活性が強かった化合物をリ-ド化合物として、それに抗原との結合のためのスペーサー部位としてβ-アラニンを導入した化合物が、先の母核よりも強いマイトジェン活性を有することを見いだした。また癌特異的抗体の産出のために癌関連糖鎖抗原部位としてTn及びSialyl-Tnの有効な合成法を開発した。 2)最終年度には、先に見いだしたリピドA誘導体と、抗原部位として癌、エイズ関連抗原とを結合させた同一分子内に免疫増強部位と抗原部位を持つ合成コンポーネントワクチンの創製に成功した。新しい概念に基づくワクチン開発の一つとして、リピドAを免疫アジュバントとする合成コンポーネントワクチンの研究が、今後、より一層進展することが期待される。
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