研究概要 |
PEG-リポソームを固形癌組織に集積させた後,癌細胞と結合させ細胞膜と融合させること目的として,抗体またはトランスフェリンを結合したPEG-リポソームを調製し担癌マウスで検討した.既に合成したPEGの先端がカルボキシル基のPEG-COOHまたは同じくマレイミド基のPEG-Malを用いて,PEG-リポゾームを調製した.これに,癌細胞表面のCEAを認識する抗CEA抗体21B2またはそのフラグメントFab'を修飾した.また,抗体の代わりにトランスフェリン(TF)を結合したリポソームも調製した.これらリポソームの固形癌への集積性を担癌マウス(マウス大腸癌Colon26を移植)に尾静脈投与して検討したところ,抗体をそのまま修飾した21B2-PEG-リポソームでは,肝臓への集積が多く,固形癌への集積は不可能であることがわかった.一方,Fab'-PEG-リポソームとTF-PEG-リポソームは高い血中滞留性を示し効率よく固形癌に集積した.蛍光色素を内封し蛍光顕微鏡で,また金粒子を内封し電子顕微鏡で観察したところ,細胞表面への結合が確認された.特に,TF-PEG-リポソームでは,エンドサイトーシスによる細胞内への取り込みも観察された. 本研究により,TF-PEG-リポソームを用いれば,担癌マウスへの全身投与で癌細胞内までリポソーム自身を送達させることが可能となった.TF-PEG-リポソームに遺伝子を封入すれば,このままでも遺伝子発現の可能性が期待できるので、検討する予定である。TF-PEG-リポソームによる遺伝子導入実験に向けて,レポータ遺伝子つまりルシフェラーゼとβ-ガラクトシダーゼを発現するプラスミドの大量生成を行った.市販のカチオニックリポソームを用いた基礎実験から,これらプラスミドが正常に遺伝子を発現することを確認した.ただ今,これらのプラスミドをTF-PEG-リポソームに封入し,担癌マウスに静注して、癌細胞内でのこれら酵素の発現を検討中である.
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