ポリグリシドールのコハク酸誘導体(PG)の酸性水溶液中でリポソーム同志が融合することに注目し、PGに直鎖のアルキル基を導入してリポソーム膜に組み込めば、低いpHで融合性を持ったリポソームが作成できると考え、研究を進めた。PGにn-decylamineを反応させ、リポソーム膜に組み込まれる誘導体を合成した(以下sucPGという)。前回までに、トランスフェリン(TF)を付与したPEG-リポソームによって標的組織や細胞にターゲティング可能であることを報告したが、sucPGリポソームにTFを結合させ、標的細胞への結合と細胞内への取り込みを調べた。sucPGリポソームは、卵黄PC:sucPG=4:1(w/w)で作成し、蛍光色素を内封した。TFのレセプターが豊富な癌細胞colon26細胞を用いた。sucPGリポソームは、酸性条件下で別のリポソームと融合することが確認された。Colon26との相互作用の結果は、TF-sucPGリポソームは、細胞に結合し、エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれ、エンドゾーム内の低いpHでエンドゾーム膜と融合し、内封した蛍光物質を細胞質に放出したことを示した。これらの結果より、ターゲティング可能で、細胞内に取り込まれ細胞質内にまで内封物を送達可能なリポソームを開発することが出来た。TF-sucPGリポソームは、遺伝子治療においてウイルスベクターに代わる、非ウイルスベクターとしての応用が期待される。
|