研究概要 |
本年度の計画に従い、温度応答性高分子ミセルの調製とそのキャラクタリゼーションを行った。 1.片末端に水酸基を有するポリイソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)の合成とキャラクタリゼーション 水酸基を有するチオール化合物を用いたテロメリゼーション法により片末端に水酸基を有するPIPAAmを合成した。合成したポリマーを限外濾過膜を用いて分画を施すことにより、おおむね数平均分子量が5,000程度のものと2,500程度のものを得た。合成したPIPAAm水溶液の濁度測定及び示唆走査型熱分析を行うことにより、下限臨界溶液温度の測定を行い、それぞれ40℃と50℃という結果を得た。 2.PIPAAmの末端の水酸基を開始点とするラクチドの重合 PIPAAmの片末端の水酸基を利用して、D,L-ラクチドの開環重合を行い、PIPAAm-ポリ乳酸(PDLLA)のブロック共重合体を合成した。GPCにより分子量を、また^1H-NMRにPIPAAmとPDLLAの組成比を算出した。D,L-ラクチドの重合反応によって高分子量化しており、また、^1H-NMRの測定結果によりポリ乳酸のピークが観察されたことからPIPAAm-PDLLAブロック共重合体の合成が確認された。 3.PIPAAm-PDLLAからなる高分子ミセルの調製と温度変化させたときの粒径ならびに多分散度変化の測定 合成したPIPAAm-PDLLAブロックコポリマーを用いて透析法により高分子ミセル溶液を調製した。ミセル溶液の動的光散乱測定を行い、粒径および多分散度を測定した。その結果、比較的分子量分布の狭いPIPAAm-PDLLAブロックコポリマーから得られた会合体は、生体温度の近いところでほぼ球形に近い高分子ミセルを形成し、そのサイズも65nmと小さいものであった。さらに、この高分子ミセルは温度上昇に伴い会合体の凝集・沈澱を生起することが明らかとなった。
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