研究概要 |
温度応答性高分子であるポリイソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)とポリ-D,L-ラクチドとからなるブロック共重合体を用いて透析法で調製した会合体は、PIPAAmの相転移温度以下ではD,L-ラクチド連鎖の疎水性凝集によってミセル様の会合体を形成するが、相転移温度以上ではPIPAAmが不溶化するために会合体は凝集・沈殿する。相転移温度前後での会合体の凝集挙動を動的光散乱測定と原子間力顕微鏡(AFM)により詳細に調べた。その結果、会合体の凝集に伴うサイズ変化は可逆的であることが明らかとなった。すなわち、凝集した会合体を一晩静置後降温させると、会合体のサイズは昇温前と一致した。さらに、相転移前後で乾燥させた資料をAFMのより観察すると、球形で比較的サイズのそろった像が得られた。すなわち、凝集・沈殿が生起しても、内核が融合するのではなく、個々の会合体の疎水化に基づく可逆的な凝集であることが確認された。 PIPAAm単独で用いると、相転移温度は32℃付近であるが、この会合体を薬物の運搬を担う薬物キャリアーとして展開するために、また抗ガン剤封入後、温熱療法との併用を考慮すると相転移温度は体温以上である必要がある。そこで、会合体の殻を形成する温度応答性高分子の相転移温度を上昇させるために、親水性のモノマーであるN,N-ジメチルアクリルアミドとの共重合を行った。これまでと同様に、メルカプトエタノールを連鎖移動剤としたテロメリゼーション反応により片末端に水酸基を有するIPAAm/DMAAコポリマーを合成した。このポリマーを用いてD,L-ラクチドの開環重合を行いブロックコポリマーを合成し、透析法により会合体を調製した。得られた会合体の沈殿・凝集を生起する温度は体温付近であり、現在、この会合体への抗ガン剤の封入を検討している。
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