研究概要 |
Castroらは、低検出効率のCdTe検出器を使って、可搬形X線装置で、管電圧45〜100kVで発生させたX線のフォトンスペクトルの直接測定を試み、stripping法の式を使って補正を行っている。この補正では、電荷の不完全な収集の効果は考慮しているが、CdとTeのK-エスケープを分離せず、平均値として取り扱い、インコヒーレント散乱(コンプトン散乱)の擬似効果も考慮していない。われわれは、最近、開発されたCdTe,CdZnTe検出器とGe検出器を使って、単相2パルスの診断用X線装置で、管電圧50〜100kVで発生させた診断用X線のフォトンスペクトルの直接測定を試み、Castroらが示したstripping法の式にインコヒーレント散乱(コンプトン散乱)の擬似効果を加え、Cd,ZnとTdの各元素ごとのK-エスケープをK_αとK_βに分離し、不完全な電荷収集効果については、エネルギーの吸収量に電荷キャリアの移動距離に応じた重みを掛けて計算するなどの修正を施した。この修正したstripping法の式を使って、CdTe検出器とCdZnTe検出で測定した^<241>Amのγ線スペクトルと、厚さ4mmのアルミニウム板を被写体として、管電圧50kVから100kVで発生させた診断用X線装置のフォトンスペクトルを補正し、Ge検出器の補正スペクトルと比較した。その結果、管電圧60kV以下の低エネルギー領域での診断用X線スペクトルはほぼ一致するが、^<241>Amのγ線スペクトル(CdTe検出器の場合)や管電圧70kV以上の高エネルギー領域では、補正が十分でなく、少し異なることがわかった。その理由は、70kV以上の高エネルギーのフォトンに対する実際のCdTe,TdZnTe検出器の全エネルギー吸収ピーク効率や不完全な電荷収集効果を完全に評価しきれていないためである。また、CdTe検出器とCdZnTe検出器を比べると、CdZnTe検出器の方がよりGe検出器に近いスペクトルが得られることを確認した。
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