研究概要 |
1 CdTe(CdZnTe)検出器を用いて測定した診断用X線スペクトルの補正 CdTe検出器の補正プログラムとして、Castroらが示したstripping法の式をコンプトン散乱の挿入やCd,Teの各元素のK-escapeをK_αとK_βに分離するなどの修正を行い、さらに、CdZnTe検出器用の補正プログラムを開発した。この補正プログラムを使って、診断用X線スペクトルを補正した結果、CdTe検出器とCdZnTe検出器を比べると、CdZnTe検出器の方が高純度Ge検出器に近いデータが得られた。 乳房撮影装置のMoとRhターゲットのX線管から約47cmの距離にCdZnTe検出器を設置して、通常の乳ガン診断時の撮影条件である管電圧28kV,50mAsで、MoとRhのフィルタを付加した場合のX線スペクトルを50μmのピンホールコリメータシステムを通して測定し、開発した補正プログラムを使って補正した結果、高純度Ge検出器で測定されたBRHのスペクトルデータとその形状が一致するが確かめられた。 2 散乱X線スペクトルの測定 われわれは、以前に、散乱X線と一次X線を分離して測定する方法を開発した。この方法を用いて、散乱X線除去用グリッドを通過してから画像面に入射する散乱X線と一次X線のスペクトルを分離測定することに成功した。この測定結果を用いて、グリッドの散乱X線除去効果を評価することができた。 3 最適撮影条件の解析 胸部X線写真撮影で、被写体情報を最大限に引き出すための最適撮影管電圧を決める客観的な方法として、心理物理的解析法を提案し、この方法が最適撮影管電圧の決定に有用であることを示した。 4 X線写真の画質(MTF、粒状)の解析 希土類増感紙・フィルム系のMTFの管電圧依存性をX線スペクトルを使って検討した結果、空間周波数3mm^<-1>以下のフロント側とバック側のMTFは管電圧とともに減少することが分かった。この現象を説明するためには、散乱X線を考慮する必要があることを示した。 X線写真モトル(粒状)の評価に、従来のウィナースペクトルを心理物理的に補正した心理物理的ウィナースペクトルを用いると、心理的RMS粒状を用いるよりも計算が簡単で、計算時間も短縮でき、評価が簡便になることを示した。
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