本研究は、悪性新生物・虚血性心疾患・脳血管疾患について、ケアを受ける側と提供する側の両者を対象に、医療・看護・福祉の側面から、在宅末期ケアを質的・量的に評価するものである。 平成8年度は、医療の側面からのケアと看護の側面からのケアについて調査を行った。その結果、以下の傾向が示唆された。 医療を受けている現状の満足度について、医療機関で患者側からの調査を行った。患者は、医療機関の看護婦に対して、(1)治療は医師の役割であり、信頼しているのは医師である、(2)疾病について心の中で思っていることは看護婦に話せない、(3)看護婦は身のまわりの世話をしてくれる存在である、というように、患者は医師と看護婦の役割を分担しているようにとらえており、看護婦の存在意義を明確に認識できていない傾向がうかがえた。この結果は、調査を行った医療機関がプライマリ-看護という体制をとってはいるものの、患者側からの調査にすぎないため、看護婦の患者への介入が十分にできていないことを示唆するとは言いがたい。このことに対しては、平成9年度に行う看護婦を対象とした調査で明らかにしていく。医師に対しては、とくにがんの告知時期がその後の療養生活に影響を及ぼすことを話す者が多くみられたことから、医師に対して告知に関する調査も併せて行いたい。今回、特に、消化器疾患を対象に調査を行ったためか、本人をはじめ家族も主治医の治療方針に従っているようである。 尚、家族が行うケア・保健婦や訪問看護婦が行うケアについての調査は、平成9年度も継続して実施して行い、看護面の問題を抽出する予定である。
|