研究概要 |
本研究は子宮頸癌の集団検診について、それに要する費用と、検診により節約される医療費を比較することにより、社会的にみた子宮頸癌検診の経済効率を調査検討するものである。研究の初年度である今年度は集団検診の費用と子宮頸癌患者の医療費の調査を行った。集検費用は佐賀市周辺の佐賀、神埼、小城保健所の管内の1市13町3村が、昭和62年度から平成6年度までに子宮癌集団検診に支出した費用を調べた。各年度で若干の増減はみられるが、平成6年度では、これら17自治体で、検診対象者の25.8%に相当する17、633名の検診を行い、その費用は46,661,985円で、受診者1名あたり2,646円の費用を使った。この年度の癌発見は19名、異形成44名で癌発見率は0.11%であった。癌患者1名発見するのに2,454,893円の費用を使ったことになる。一方医療費は1994年より1996年の間に、佐賀医科大学附属病院にて入院治療した、全子宮頚癌患者について、保健診療報酬の請求記録により調査した。集検により発見された頚癌患者の医療費の平均は1,327,540円であったが、自覚症状により発見された癌患者の医療費平均は2,213,928円であった。医療費を頚癌の臨床進行期別で比較すると、0期608,712円、Ia期724,667円、Ib期1,758,944、II期2,991,717円、III・IV期3,232,735円であり、期別で比較すると集検発見癌と、それ以外で差はなかった。進行期別の患者数は、集検例では0期46.9%、Ia期16.3%、Ib期22.4%、II期12.2%、III・IV期2%であるのに対し、それ以外は夫々、13.3%、8.2%、32.0%、25.8%、22.7%であった。集検による医療費節約は、早期癌で発見されることによることが、実際の医療費の調査により証明できた。次年度はこの医療費節約と集検に要した費用との関係について調査する予定である。
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