研究概要 |
本研究は子宮頸がんの集団検診に要する費用と、検診により節約される医療費を比較することにより社会的にみた子宮頸がん検診の経済効率を調査検討するものである。 1. 集団検診の費用:対象は平成6〜8年度の子宮頸がん受診者(佐賀中部保健所管内2市13町3村)3年間の延べ数51,458名(受診率25.9%)、要精密検診者397名(0.8%)、精密検診受診者358名(90.2%)、子宮頸がん確定診断者63名(0.12%)、異形成153名(0.31%)であった。3年間に対象市町村が支出した集団検診の費用の総額は、166,048,189円。精密検査費用を加えると173,208,189円となり、子宮頸がん1名発見に要した費用は2,749,336円となった。 2. 一人当たりの平均医療費(2医療機関に、平成6〜8年度に入院した141名):検診群49名の平均医療費は、1,251,947円、非検診群92名の平均費用は、2,036,105円であった。単純に平均医療費を比較すると、検診群の方が784,158円低額であった。 3. がん検診を実施しなかったと仮定すると、以下のように推定できる。(1)異形成153名のうち、6名浸潤がん、31名上皮内がんへ進行して発見されるであろう。(2)集団検診で発見されたがん患者63名と異形成からの6名が集団検診を受けずに子宮頸がんが発見されると仮定すると、その進行期は、O期8名、Ia期7名、Ib期21名、II期15名、III期11名、IV期7名となる。これらに異形成よりの31名を加えて0期39名と推定した。(3)医療費を推定すると162,566千円となる。95,049千円節約できたが、実際は検診で発見されたため、集検の費用を加算すると7,816万円マイナスとなった。 子宮がん検診により、早期発見、早期治療ができ、低額な医療費で治療できる。しかし、検診による医療費を考慮すると費用の節減には結びつかないことが示唆された。
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