内因性阻害物質による一酸化窒素合成酵素活性の制御と肥厚性血管病変の修飾機構

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08672604
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 東 洋 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助教授 (20134736)
• 研究分担者: 尾林 聡 東京医科歯科大学, 医学部・産婦人科, 助手 (10262180) ; 磯谷 栄二 東京医科歯科大学, 医学部・脳神経外科, 助手 (90251529)
• キーワード: 動脈硬化 / NO合成酸素(NOS) / 内因性阻害物質 / 細胞増殖 / p-53蛋白 / p-53遺伝子発現 / EDRF / NO / endothelin-1

研究概要

内皮細胞の剥離後に惹起される内膜肥厚を動脈硬化の初期病変と捉え、種々の検討を行ってきた。その結果、内皮細胞によるEDRF/NO産生/遊離能の低下と内膜肥厚発現との間には密接な相関関係のあることを示唆する結果を得た。内皮細胞剥離後の早期には、EDRF/NO産生/遊離能の低下に伴って中膜平滑筋層において強力なmitogenであるendothelin-1含量が著明に増加し、新生内膜でのPCNAならびにKi-67の発現およびそれに同期してp-53蛋白とp-53遺伝子発現が観察された。新生内膜における細胞外マトリックスを構成するelastinやcollagen合成能も著しく亢進していることを示唆する結果を得た。それでは再生内皮細胞でのEDRF/NO産生/遊離能が何故低下するのであろうか?NOはL-arginineを基質としNO合成酵素(NOS)の媒介によって生合成されることが知られている。申請者らは、内皮細胞内には、NOS活性を阻害するmethylarginine誘導体が分布することを見出した。内皮細胞剥離後の再生内皮細胞において、NOSに対する内因性methylarginine誘導体が増加すること、ならびに、NOSの基質であるL-arginine含量が減少するために、EDRF/NO産生/遊離能が著しく低下し、これらのことが、内膜肥厚の誘因の一つとして重要な役割を演じていることを示唆した。
喫煙が動脈硬化のリスクファクターの一つとして重用視されているので、内皮細胞の剥離後に惹起される内膜肥厚に及ぼすニコチンを長期投与の影響について検討した。その結果、喫煙者の血中濃度に相当するニコチンを7週間に亙って経口投与すると、内膜肥厚は増悪傾向を示し、ニコチンによって、再生内皮細胞における内因性methylarginine誘導体が更に増加すること、また、endothelin-1含量が一層増加するためであることを示唆した。更に、ウシ毛様体筋にもNOS活性も阻害するmethylarginine誘導体が分布することを見出し、毛様体筋の緊張調節を介して目の遠近調節に関わっていることを示唆した。

研究成果

• [文献書誌] Aoyagi M,Yamamoto M,Azuma H et al.: "Smooth muscle cell proliferation,elastin formation,and tropoelestin transcripts during the development of intimal thickening in rabbit carotid arteries after endothelial denudation" Histochemistry Cell Biology. (in press). (1996)
• [文献書誌] Yamamoto M,Aoyagi M,Azuma et al.: "Changes in osteopontin mRNA expression during phenotypic transition of rabbit arterial smooth muscle cells" Histochemistry Cell Biology. (in press). (1997)
• [文献書誌] Aoyagi M,Yamamoto M,Azuma et al.: "Expression of p53 protein and p53 gene transcripts in rabbit carotid arteries after balloon denudation" Histochemistry Cell Biology. (in press). (1997)
• [文献書誌] Hamasaki H,Sato J.et al.: "Effect of nicotine on the intimal hyperplasia after endothelial removal of the rabbit carotid artery" General Pharmacology. 28(4)(in press). (1997)
• [文献書誌] Azuma H,Masuda H,et al.: "A possible role of endogenous inhibitor for nitric oxide synthesis in the bovine ciliary muscle" Experimental Eye Research. (in press). (1997)