研究概要 |
喫煙者の血中濃度に相当するニコチンを7週間にわたって経口投与すると、内膜肥厚は増大した。EDRF/NO産生・遊離能低下、再生内皮細胞でのL-NMMA、ADMA濃度増加、血管壁endothelin-1含量増加がニコチンによって一層亢進した結果であろうと考えられた。ラットの実験的腎障害もでるにおける血圧上昇と内皮細胞でのL-NMMA、ADMA濃度増加に伴うNO産生低下とが密接に関連すること、さらに、ウシ毛様体筋にもNOSに対する内因性阻害物質が分布し、眼の遠近調節に関ることが示唆された。 内皮障害後の修復過程において、elastin生合成ならびにtropoelastin発現は、平滑筋細胞の増殖休止に続いて開始され、高度な制御機構の存在することが示唆された。Flow cytometryによってGo期(収縮型)およびGIA期(中間型:移行型)と同定された培養平滑筋細胞ではいづれも、osteopontin mRNAは検出されなかったが、一方、GIB,S,G2+M期(合成型)ではosteopontinmRNAが発現していた。すなわち,osteopontin mRNA発現の有無を検べることによって血管平滑筋細胞の細胞増殖周期を推測し得る。内皮障害後の新生内膜においてp53蛋白ならびにp53遺伝子発現を実験動物を用いて初めて証明した。内因性NOは毛様体筋の弛緩を惹起し、L-NMMAならびにADMAが内因性NO生合成阻害物質としてNO生合成を調節することを介して遠近調節に関わる可能性が示唆された。NOはguanylate cyclaseを活性化し、cyclic GMPレベルを増加することによって毛様体筋を弛緩することが示唆された。puromycin誘発急性腎症に伴う高血圧発症にNO生合成阻害活性を有する内因性ADMAが重要な役割を演じることが示唆された。
|