中枢神経系Na^+-Ca^<2+>交換系の病態生理学的意義に関する研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08672606
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 松田 敏夫 大阪大学, 薬学部, 助教授 (00107103)
• キーワード: Na^+-Ca^<2+>交換系 / Ca^<2+>シグナル / アンチポーター / 細胞死 / 一酸化窒素 / 再灌流障害 / アストロサイト

研究概要

グリア細胞Na^+-Ca^<2+>交換系(NCX)の病態的意義をインビトロ、インビボの系で追究することを目的とし、受容体刺激による細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)変化に対するNCX活性変化の作用について検討し、[Ca^<2+>]_i調節におけるNCX順モード(Ca^<2+>の汲み出し)の役割を追究した。又、NCX逆モード(Ca^<2+>の取り込み)の役割について、遅発性グリア細胞死におけるNCX活性化機構について検討した。ノルアドレナリン(NA)、グルタミン酸、ATP刺激により[Ca^<2+>]_iの増加が見られるが、NCXを活性化する一酸化窒素(NO)はこれらのCa^<2+>シグナルを抑制し、NCXを阻害するアスコルピン酸は増強した。更に、NOの作用は、アンチセンス処理でNCXの機能を低下させた細胞では見られなかった。これらの成績は、[Ca^<2+>]_iが増加した時NCXが[Ca^<2+>]_iの静止レベルへの回復過程に関与していること、またNCXがNOの作用点となっていること等と示している。NCX逆モードによる[Ca^<2+>]_i調節については、in vitro再灌流実験で検討した。アストロサイトを低Ca^<2+>溶液に曝露後Ca^<2+>含有溶液で再灌流すると遅発性の細胞死が見られた。この現象は、アンチセンス処理により軽減されるた。また、本障害は、NCX活性を阻害する薬物なるいは熱ショック蛋白によって保護された。熱ショック蛋白は、再灌流後の[Ca^<2+>]_i変化に影響を与えず、その作用は[Ca^<2+>]_i増加以降の過程にあることが示された。NCX阻害薬の開発に関しては、アストロサイトでのCa^<2+>取り込みに(NCX逆モード)よる活性測定で検討し、数個の化合物がμMレベルで阻害活性を示すことを明らかにしている。

研究成果

• [文献書誌] Toshio Matsuda: "Involvement of Na^+-Ca^<2+> exchanger in reperfusion-induced delayed cell death of cultured rat astrocytes." Eur.J.Neurosci.8. 951-958 (1996)
• [文献書誌] Kazuhiro Takuma: "Heat shock protects cultured rat astrocytes in a model of reperfusion injury." Brain Res.735. 265-270 (1996)
• [文献書誌] Kazuhiro Takuma: "Role of Na^+-Ca^<2+> exchanger in agonist-induced Ca^<2+> signaling in cultured astrocytes." J.Neurochem.67. 1840-1845 (1996)
• [文献書誌] 松田敏夫: "グリア細胞におけるCa^<2+>アンチポーターによる細胞内Ca^<2+>調節" 日薬理誌. 108. 109P-114P (1996)
• [文献書誌] 松田敏夫: "Na^+/Ca^<2+>交換輸送蛋白" 日本臨床. 54. 36-41 (1996)
• [文献書誌] Kazuhiro Takuma: "Involvement of nitric oxide in Ca^<2+> paradox-induced delayed glial death." International Academy for Biomedical and Drug Research. 11. 124-128 (1996)
• [文献書誌] Toshio Matsuda: "Protective effect of taurine against reperfusion injury in cultured rat astrocytes." Taurine 2.Basic and Clinical Aspects. 491-497 (1996)
• [文献書誌] Toshio Matsuda: "Possible role of Na^+-Ca^<2+> exchanger in nitric oxide-induced serotonin release in the striatum of freely moving rats." International Academy for Biomedical and Drug Research. 11. 129-132 (1996)
• [文献書誌] Kazuhiro Takuma: "Involvement of nitric oxide in Ca^<2+> paradox-induced delayed glial death." International Academy for Biomedical and Drug Research. 11. 124-128 (1996)
• [文献書誌] Toshio Matsuda: "Protective effect of taurine against reperfusion injury in cultured rat astrocytes." Taurine 2 : Basic and Clinical Aspects. 491-497 (1996)
• [文献書誌] Kazuhiro Takuma: "Ca^<2+> depletion facilitates taurine release in cultured rat astrocytes." Jpn.J.Pharmacol.72. 75-78 (1996)