本研究はグリア細胞Na^+-Ca^<2+>交換系の病態的意義を追求することを目的としており、平成9年度では、脳障害モデル動物でのNa^+-Ca^<2+>交換系mRNA量の変化と、インビトロ再灌流障害モデルであるCa^<2+>パラドックス障害の分子機構について検討した。ラット脳虚血再灌流後の脳各部位でのNa^+-Ca^<2+>交換系アイソフォーム(NCX1、NCX2、NCX3)mRNA量は、RT-PCR法での検討から大きな変化を示さなかった。また、ラット培養アストロサイトのCa^<2+>パラドックス障害がFK506やデルタメスリン等のカルシニューリン阻害薬により抑制されること、本細胞に神経細胞と異なるカルシニューリンのサブタイプが存在していることが免疫化学的に示された。そして、Ca^<2+>パラドックス障害がカタラーゼにより抑制されることCa^<2+>パラドックス障害発現前に過酸化水素が産生されることも示され、本障害発現に過酸化水素の関与が考えられた。さらに、神経細胞ではNCX1とNCX2がアストロサイトではNCX1が主なアイソフォームであることを競合的RT-PCR法で明らかにし、これらの細胞のNa^+-Ca^<2+>交換系活性がNa^+感受性、膜興奮性の作用の点で異なっていることを見いだした。これらの成果は、Na^+-Ca^<2+>交換系の調節機構、役割が神経細胞とアストロサイトで異なっていることを示唆する。なお、アンチセンス核酸法による本アイソフォームの選択的ターゲッティンング法は今回の研究では確立できなかった。
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