研究概要 |
耐性克服剤と抗癌剤の薬物動態における相互作用機構を解明し、臨床適用時の至適投与設計法を開発する目的で、P糖蛋白質輸送における相互作用機構を培養細胞系で検討した。実験系としては、既に確立したP糖蛋白質輸送評価系(Tanigawara et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1992)、すなわちブタ腎近位尿細管上皮細胞由来のLLC-PK1及びそれにヒトMDR1(multidrug resistance)遺伝子を導入しP糖蛋白質を高発現させたLLC-GA5細胞を用いた。化学構造および物性の異なる一連の化合物を用いて、P糖蛋白質輸送に関する定量的構造活性相関を模索した。抗癌剤としては、臨床で多剤耐性が問題となるdoxorubicin,daunorubicin,vinblastine等を対象とし、耐性克服剤としては、現在臨床治験の行われているSDZ PSC-833を中心にしてcyclosporinAと比較評価した。さらに、最近臨床使用が承認された新規抗癌剤docetaxelについてP糖蛋白質との親和性および輸送活性を検討した。その結果、cyclosporinAより脂溶性の高いSDZ PSC-833は約5〜10倍P糖蛋白質阻害活性が強いこと、濃度依存的に阻害すること、SDZ PSC-833自身は輸送されないことを明らかにした。さらに、docetaxelもP糖蛋白質によって輸送されるが、その程度はP糖蛋白質発現量と相関することを見出した。
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