研究概要 |
昨年度私たちは、血液カテコールアミン値を指標に、サイトカインの一つであるインターロイキン1βの脳室内投与が中枢性に交感神経系を賦活すること、この過程で脳内一酸化窒素(NO)-プロスタグランジン(PG)系が関与することを報告した。そこで今年度はラット脳室内に種々のNO供与体を投与し、胃酸分泌および血液カテコールアミン値を指標に、中枢性交感神経賦活機構におけるNO系の役割を解析した。迷走神経性胃酸分泌は交感神経系の賦活によりアドレナリンα受容体を介して抑制される(J.Pharmacol.Exp.Ther.,1983)。 [研究方法] ウレタン麻酔したラットを用いて、脳室内に投与したNO供与体[Sodiumnitroprusside(SNP),3-Morpholinosydnonimine(SIN-1)]の迷走神経性胃酸分泌および血漿カテコールアミン値に及ぼす影響を検討した。 [実験成績](1)脳室内に投与したSNPおよびSIN-1は迷走神経の電気刺激により増加した胃酸分泌を抑制した。この抑制作用はシクロオキシゲナーゼ阻害薬インドメタシンの脳室内前処置、内臓神経切除術、およびアドレナリンα受容体遮断薬フェントラミンの筋肉内投与により消失した。(2)脳室内に投与したSIN-1は血漿アドレナリン(Ad)およびノルアドレナリン(NA)値を上昇させた(Ad増加>>NA増加)。このAdおよびNA値増加作用は脳室内に前処置したインドメタシンにより消失した。一方、脳室内に前処置したトロンボキサンA2合成酵素阻害薬フレグレレイトはAd増加を選択的に阻害した。 [結論]脳内においてNOはアラキドン酸カスケードを活性化して中枢性交感神経-副腎髄質系賦活機構に関与する。脳内PGE2が交感神経系を選択的に活性化することはすでに報告しているが、脳内トロンボキサンA2が副腎髄質系を選択的に活性化することが推測された。
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