研究概要 |
今回、科学研究費補助金の交付に伴い画像解析システムを購入し、画像の記録システムおよび画像解析システムの構築にとりかかった。さらに生体位で体内組織の循環を高倍率の顕微鏡下で観察するためには、それぞれの臓器の解剖学的な位置を充分に考慮した特殊なチャンバーを設計・作製する必要があるので、実際には試作品を作製し、正常の循環を保つためのチャンバーの改良とともに光学系の構築にフィードバックさせた。その結果、水腎症を惹起したラットの腎臓を一定温度に保った人工緩衝液(37-38℃)内に工程できるように新規にチャンバーを作成し、生体顕微鏡下に生体位の状態で腎微小循環を観察できるシステムを構築した。さらに連続的に観察される腎微小循環の像は顕微鏡にマウントしたCCDカメラを介してHi8コンピュータビデオデッキに記録できるようなシステムを構築した。実験には4週令のラットを用い、左尿管を結紮し、2-3カ月後に左腎臓を露出した。ラットではこのような処置による腎臓は風船状に腫大し(長径約3cm)、腎実質は菲薄化する。そこで実際に水腎症ラットを用いて既述のチャンバーに腎臓を固定し、腎微小血管床の同定と計測を行い、基礎的データをとった。その結果、血液で灌流されている多数の糸球体を観察することが出来、糸球体の上流側では小葉間動脈、輸入細動脈、下流側で輸出細動脈を容易に同定できた。血管径をビデオフレーム上で計測した結果、小葉間動脈近位側で17.1±2.8μm、遠位側で14.7±1.2μm、輸入細動脈近位側で10.7±0.7μm、遠位側で10.5±0.8μm、輸出細動脈近位側で10.3±0.9μm、遠位側で12.6±1.4μm(10-20例の平均±標準誤差)であった。本システムを用い、腎臓が固定されているチャンバー内緩衝液にエンドセリンB受容体作用薬のIRL1620を最終濃度0.3, 1.0nM添加すると、容量依存生検に各血管床の血管径が減少した。
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