腎血管床は他の臓器血管床とは異なり、糸球体毛細血管をはさみ、2種類の細動脈、すなわち輸入細動脈および輸出細動脈が存在し、それぞれが糸球体前血管抵抗、糸球体後血管抵抗を生みだし、両者のバランスによって糸球体血流量および糸球体濾過量が巧みに調節されている。このような細動脈の反応を直接視覚化する目的で昨年度、科学研究費補助金の交付に伴い、画像解析システムを購入し、画像の記録システムおよび画像解析システムを構築した。さらに生体位で体内組織の循環を高倍率の顕微鏡下で観察するためには、それぞれの臓器の解剖学的な位置を充分に考慮した特殊なチャンバーを設計・作製する必要があるので、実際には昨年度、試作品を作製し、正常の循環を保つためのチャンバーの改良を繰り返した結果、本年度においてラットの直腸温をモニターしラット体温を設定温度に保ちつつ、観察対象となる腎組織を緩衝液中で一定温度に維持できるシステムの構築に成功した。現在、本システムを用いて一酸化窒素合成阻害薬の作用とエンドセリンの相互作用について検討中である。 同時にマクロのレベルで腎血行動態調節におけるエンドセリンの役割について麻酔したラットを用い、腎血流量を電磁流量計で測定することにより検討した。その結果、腎血管床において内因性のエンドセリンがETB受容体を介しETA受容体経由の収縮反応を抑制していること、さらにこの機序に一酸化窒素ならびにプロスタグランディンが関与していることを明らかにした。さらに自然発症高血圧ラットを用いた実験で免疫抑制薬であるFK506の腎血管収縮機構にエンドセリンが関与していることを明らかにした。
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