研究概要 |
実体顕微鏡下で単離した尿細管の各分節を用いて、細胞外ATPによる細胞内カルシウム濃度([Ca^<2+>]i)を測定し、ATPreceptorの局在およびそのsubtypeを決定した。細胞外ATPによる[Ca^<2+>]iの上昇は糸球体、近位尿細管S1、皮質部集合管(CCD)および髄質外層集合管(OMCD)で観察され、OMCDの上昇が最も大きかった。OMCDおよびCCDでの[Ca^<2+>]iの上昇は2相性で、ATP添加により急峻な[Ca^<2+>]iの上昇とそれに続く持続相が観察された。糸球体およびS1ではこの持続相は見られなかった。OMCD潅流液よりCa^<2+>を除くと、ATP添加による初期の[Ca^<2+>]iの上昇は約30%減弱し、持続相は消失した。ATPによる[Ca^<2+>]iの上昇にphospholipase C(PLC)が関与しているか否かを知るために、PLCのinhibitorであるneomycinを前投与したところ[Ca^<2+>]iの上昇は抑制された。 ATPとそのanalogおよびmetaboliteを用いた実験より、S1に存在するpurinoreceptorはP_<2Y>、OMCDに存在するのはP_<2Y>あるいはP_<2U>であると結論された。興味深いことに、vasopressin,angiotensin II,endothelin I,bradykinin等による尿細管細胞の[Ca^<2+>]i上昇がATPによる前処置で消失した(purinoreceptorを介したdesensitization effect)。この結果は、尿細管に対するこれらのhormoneの作用をATPが調節しているという可能性を示唆するものである。
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