腎におけるプリン2受容体に対する特異的作動薬および拮抗薬の開発に関する基礎的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08672623
• 研究機関: 杏林大学
• 研究代表者: 関根 孝司 杏林大学, 医学部, 助手 (50255402)
• 研究分担者: 遠藤 仁 杏林大学, 医学部, 教授 (20101115) ; 武田 理夫 杏林大学, 医学部, 講師 (40255401) ; 細山田 真 杏林大学, 医学部, 助手 (00291659)
• キーワード: purinoreceptor / proximal tubules / organic anion transporter / protein kinase C / phosphorylation

研究概要

本年度は、これまでの2年間におこなってきたATP receptorによる生理・薬理機能の調節因子のひとつとして、近位尿細管での有機アニオン輸送との関連について検討した。
本研究代表者は、ATP受容体の解析とともに、尿細管における物質輸送についても検討を続けていたが、1997年に有機アニオントランスポーター(OATl)のクローニングに成功した(J.Biol.Chem.272 18526-18529,1997)。OAT1は腎臓よりの種々の有機アニオン(アニオン性薬物、尿酸、プロスタグランジン、サイクリックヌクレオチド等)の排泄に中心的な役割を果たし、生体異物の重要な排泄経路となっている。
OAT1の塩基配列中にはPKC燐酸化推定部位が存在し、PKC介したregulationを受けている可能性がある。即ち、腎内ATP receptorを介して細胞内Caが上昇し、PKC介した経路でOAT1がその輸送能の調節を受けることが想定される。
本年度の研究により
1.OAT1は近位尿細管の基底側膜に存在することを確認した(ATP受容体が近位尿細管に存在することは既に我々は一昨年に報告した)。
2.OAT1を近尿細管由来細胞に発現させ、各種PKC刺激薬および阻害薬を用いた実験によりOATlはPKCにより負の調節を受けていることが示唆された。
以上の結果は、近位尿細管のATP受容体の生理機能の一つとして、腎臓よりの異物排泄の制御という機構を示すのもである。

研究成果

• [文献書誌] Sekine,T.et al.: "Cloning,functional characterization and localization of a rat renal Na^+-dicarboxylatetransporter." Am.J.Physiol.275. F298-305
• [文献書誌] Sekine,T.et al.: "Identification of multispecific organic anion transporter 2 expressed predominantly in the liver." FEBS letter. 429. 179-182
• [文献書誌] Cha,SH.,Sekine,T.et al.: "P2-purinoreceptor localization along a rat nephron and evidence suggesting the existence of subtype,P2Y1 and P2Y2." Am.J.Physiol.274. F1006-1014
• [文献書誌] Sekine,T.,et al.: "Molecular cloning and characterization of a high-affinity carnitine transporter from rat intestine." Biochem.Biophys.Res.Commun.251(2). 586-591
• [文献書誌] Tojo,A.,Sekine,T.,et al.: "Immunohistochemical localization of multispceicif renal organic anion transporter(OAT1)in rat kidney." J.Am.Soc.Nephrol.(in press).
• [文献書誌] Kusuhara,H.,Sekine,T.,et al.: "Molecular cloning and characterization of a new multispecific organic anion tranporter from rat brain." J.Biol.Chem.(in press).