研究概要 |
下垂体後葉ホルモンとしてのバソプレシン(AVP)の循環調節は良く知られているが,脳のAVPの神経伝達物質としての生理的意義に関しては不明な点が多い.本年度は前年度の成果を基に,次の点を明らかにすることができた. 1.電気生理学的研究; 最後野および孤束核を含む延髄のスライス標本を用いて,電気生理学的手法でAVP受容体の性質を検討した.その結果,最後野の神経はAVPに対し,興奮と抑制の両方作用を示した.最後野でのAVPによる興奮は,AVP-V1受容体拮抗薬により抑制されたが,V2受容体拮抗薬ではほとんど変化なかった.このことから,延髄の最後野神経にV1受容体の存在が明らかにされた. 次に,最後野神経でのAVPによる刺激が,孤束核神経にどのように伝達されるかを検討した.その目的で,最後野を電気刺激し,その刺激に対する応答を孤束核神経から記録した.最後野を電気刺激すると,その応答が刺激から約5msec遅れて孤束核神経で記録された.この応答は,LowCa^<2+>・HighMg^<2+>を灌流液中に負荷することにより消失した.以上の結果から,最後野から孤束核への神経入力は単シナプス入力であることが確認された. さらに,最後野を電気刺激による孤束核神経での応答は,non-NMDA受容体拮抗薬(CNQX)で抑制され,NMDA受容体拮抗薬(AP-5)では影響がなかった.これらのことから,最後野から孤束核への神経入力は単シナプス入力であり,その神経はグルタミン酸性神経であることが確認された. これまでの研究成果を総括し,国際学会シンポジウムで報告した.
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