われわれは異種肝アルギナーゼで免疫したり、人工的に肝障害を繰り返し惹起させた動物に、抗肝アルギナーゼ自己抗体が出現することを確認したほか、ヒトに於いても肝障害によって自己肝アルギナーゼが血中に逸脱した後、これに対する自己抗体が現われ、既存の肝疾患マーカーが正常化しても慢性肝炎非活動型のような慢性化した場合は抗肝アルギナーゼ自己抗体が高値のまま推移することを見い出した。これは抗肝アルギナーゼ自己抗体が「肝病歴、予後のマーカー」という従来にない肝疾患の時間軸臨床指標として活用できるということであり、その実用化は長期コントロールが必要とされる慢性肝疾患の経過観察に大きく寄与するものと考えた。 本研究期間内の結果として、酸素免疫測定法(ELISA法)による抗肝アルギナーゼ自己抗体の検索を日常的な臨床検査法として確立された。即ち、ヒト肝アルギナーゼと免疫学的交叉反応性が高いため代用可能なラット肝アルギナーゼを精製し、これを標的抗原として固相化マイクロプレートを用いたELISA法によりa)肝疾患 b)自己免疫性疾患 c)肝癌、生体部分肝移植の術前、術後 d)肝以外の各種疾患を中心に血中抗肝アルギナーゼ自己抗体の測定をおこなった結果 1.慢性肝疾患で本抗体の抗体価が高く、特に他のマーカーに反映されないsilent liver diseaseの診断に有用であることが確認され、操作も簡便で日常検査として十分実用化できるものであると判断された。 2.生体部分肝移植の術前、術後におけるrecipientの血清抗肝アルギナーゼ自己抗体を測定したところ予後不良例では抗体価が上昇せず、良好な予後を示す場合は一過性の上昇があり、生体部分肝移植予後判定に使える可能性が示された。
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