研究概要 |
今年度の成果は、モノクローナル抗体を利用し、酸化LDLの主な成分であるMDA化LDLを血流中で検出する系を確立したことである。この系を利用して、30から50才の健常成人320人を対象として血清中のMDA化LDLを測定し、全例にこれを検出することが出来た。かつ、その濃度は20-80U/1と推定された。男女の性差が認められ、男性は女性よりも高値を示す傾向が認められたが、例数を増やし詳細な検討が必要である。(臨床病理45,47-54,1997.) 今後、このMDA化LDLの基準範囲を設定するために、母集団を広げることを計画中である。 病態との関連については、動脈硬化と特に関連の深い、LDL中の小粒子高比重リポ蛋白との関連を追及し、この分画にMDA化LDLが通常のLDLよりも高濃度に存在することを確認した。(投稿中) また、CETP欠損症では、この小粒子高比重リポ蛋白が大量に存在することが知られ、この症例では、血清中にMDA化LDLが多量に存在し、CETP欠損症での動脈硬化惹起性の原因の一端が明らかにされた。(臨床病理45,55-57,1997.) さらに、動脈硬化を背景とする疾患、虚血性心疾患、動脈血栓症を中心に臨床的に動脈硬化を反映する指標となりうるか否かを検討する予定である。
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