研究課題/領域番号 |
08672639
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
一山 智 名古屋大学, 医学部, 講師 (30223118)
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研究分担者 |
太田 美智男 名古屋大学, 医学部, 教授 (20111841)
下方 薫 名古屋大学, 医学部, 教授 (10022906)
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キーワード | A群β溶連菌 / TSLS / PFGE / 遺伝型 / 血清型 / SpeA / 交叉感染 / 予防内服 |
研究概要 |
A群β溶連菌(Streptococcus pyogenes)はヒトに様々な感染症を起こすが、最近、急速に進行する全身性劇症感染症(Toxic shock-like syndrome:TSLS)が臨床上問題となっている。その病態生理、治療および予防対策については不明な点が多い。我々の研究では、1992〜1994年にわが国で発症したTSLSを含む重症感染症42例を中心に、軽症および保菌患者の菌株と比較しながら、菌株の血清学的、遺伝学的特徴について解析した。 重症株42株パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)で16タイプ(遺伝型)に分類された。この方法で同一の血清型の株をさらに詳細の型別する事が可能であった。コンピューターを用いた各々のタイプの遺伝学的類似性の解析では、これらの42株の間でかなりの多様性がみられた。このことはある特定の菌株が重症感染症を起こすものではないことを示唆していた。また発熱毒素(SpeA)の遺伝子の解析でも、遺伝子非保有株でも重症感染症を起こすことが示され、SpeAの重症化への関与は必須とは言えなかった。以上より、本菌による重症感染症の病態は菌側の他の病原因子、あるいは宿主側の要因の関与が考えられた。 さらにTSLS発症の4例について、患者およびその家族より分離した菌株についてPFGEによる型別を行った。いずれの場合も患者およびその家族から同一の菌株が検出され、家族内での交叉感染が示された。家族ほとんどは軽症の咽頭炎あるいは保菌であったが、肺炎、重症咽頭炎、および胎児感染がそれぞれ1人ずつみられた。以上より、重症感染症の病態が不明である現時点においては、TSLS患者の家族に対するペニシリンの予防内服の必要性が今後検討されるべきと考えられた。
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