研究概要 |
平成8年度は主に化学発光反応の高感度化とバイオリアクターを用いた化学発光FIA法による血清3-ヒドロキシ酪酸(3-HBA)測定法に関する研究を行い,さらに血清1,5-AG測定法に関する研究も少し行った。 化学発光の高感度化に関しては,無脈流ポンプの採用,フローセルの改良,光がチューブを伝わって外部から発光検出器内に入らないようにする工夫などにより,ノイズを少なくすることが可能になり,その結果,過酸化水素の検出感度を約0.1μmol/μ1(試料)まで上昇させることができた。 3-HBA測定に関しては,バイオリアクター(同時固定化酸素カラム)を構成する3-HBA脱水素酵素(3-HBADH)とNADHオキシダーゼ(NOX)の重量比を5.5:0.5,5:1,4:2と変化させて,3-HBAに対して最も強い活性を示すカラムリアクターを検討した結果,5:1の重量比を持つカラムが3-HBA測定において最も有効に作用した。また,5:1の重量比をもつ3つの違ったタイプの同じ大きさのカラム,すなわち,同時固定化HBADH/NOXカラム,重層HBADH/NOXカラム,混合HBADH/NOXカラムにNADHと3-HBAをそれぞれインジェクションして,3種のカラムの性能を比較検討した。その結果,同時固定化3-HBADH/NOXカラムは1.5mMまでのNADHと3-HBAをほとんどすべて分解し,3-HBAの検量線も直線性を示し,さらに他の2種のカラムと比べて約2倍の発光強度を示した。重層HBADH/NOXカラムや混合HBADH/NOXカラムはNADHに対しては同時固定化カラムとほとんど同じ分解率を示したが,3-HBAの分解率は悪く直線性を示さなかった。この原因は同時固定化カラムだと,3-HBADHとNOXが非常に近接して存在しているために,それら2つの酵素反応が非常に効率よく進行したためであると考えられる。
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