研究概要 |
1.各種疾患における血清中元素濃度の変動 健常者および各種疾患患者(肝疾患、腎疾患、糖尿病)の血清を、限外濾過膜(ウルトラセント10;分画分子量1万)を用いて遊離型を分別し、ICP-AESにより原血清および遊離型の多元素同時測定を行った。肝疾患において原血清中元素濃度の健常者に対する比率が、危険率0.1%以下で有意に高値を示すものは、Cu、Si、低値を示すものはCa,Fe,P,Kであった。同様に、腎疾患における高値は、Cu,Si,低値は、Ca,Feであり,特に、Siが顕著に高値を示した。糖尿病における高値は、Cu,Si、低値は、Mg,Ca,Fe,Naであった。また、原血清に対する遊離型の比率では、各種疾患群のMg,Ca,Pに低下傾向がみられた。 上記各疾患群では、多くの元素において、血清中濃度および遊離型比率ともに健常者に対する有意差が認められ、疾患との関連性がうかがえた。 2.血清中低濃度のケイ素測定に関する研究 ICP-AESでのSiの微量測定は困難であり、健常者のSi濃度は低いため、これまでほとんど測定できなかった。今回、標準物質添加法をを用いて、ICP-AESによる血清中微量Siの測定を試みた。10検体についてSi標準液2,3,5ppmを添加し、各2重測定して添加回収率を求めた。回収率の平均値は、それぞれ101.6,98.7,100.6%で、そのCVは、4.3,1.8,1.5%であった。また、実測可能であった22検体について添加法との相関を調べたところ、y=0.978x-0.097,r=0.992と良好な相関を示した。以上より、標準物質添加法で血清中微量Siの測定が可能であることがわかった。さらに、原子吸光分析装置を用いての血清中Si濃度測定の諸条件についても検討を行った。
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