研究概要 |
本年度は最終年度に当たり、概ね順調に研究が進められ応分の成果を得た。特に、プロテイン1(P1)において今後の研究の発展につながる、多くの新しい知見を得た。 要約すると以下の通りである。 1. 塩基性胎児蛋白(BFP)の尿中測定の意義:尿中の基準範囲の設定、精漿中で髄液から精製したものとほぼ構造的に同一の成分の発見、尿中の動態では腫瘍、感染症で上昇し非特異的炎症マーカーで有ることを示された。我々の研究が基礎となり健康保健検査項目に収載がなされ、実際の臨床において利用が始められている。 2. シスタチンC:血清基準範囲の設定を行った。男性>女性、年齢依存性の増加を認めた。尿中ではきわめて不安定で、臨床的利用が困難であることを確認した。血清GFRの高感度マーカーであることも再確認した。現在、清腎前性の増加の有無、季節内変動、日内変動について検索中である。 3. P1:現在、P1に対する新しいモノクローナル抗体8クローンを作製し、エピトープ解析をrP1(Modified)、ペプチドPIN ELISAにより検討中である。また、これらの抗体を組み合わせて新しいELISAが開発した。この方法を用いて、尿細管障害患者の動態変化(Endemic nephropathy,Croatia)との国際共同研究も予定されている。 最近、前立腺癌患者末梢血中より、P1-mRNAをRT-PCR法により検出し、PSAとの関連性から新しい転移マーカー、腫瘍増殖性のマーカーとして臨床的意義の追求が始められている。一方、肺癌患者ではP1の細胞表出の減少を組織細胞化学的に証明し、これに対してサルコイドーシスにおいてはP1の産生増強、気管支喘息における減少を新たに見出した。
|