研究概要 |
精漿中には無数の蛋白成分が存在するが、この中からProtein 1,basic fetoprotein,PSA,シスタチンC、IgGに特に的を絞って病態検査上の意義、局在、機能に関する研究に従事して応分の成果を得た。 1) プロテイン1(P1):プロテイン1に対するモノクローナル抗体を作製、さらにrecombinant抗原を作製して、世界で初めてphospholipase Cの機能を抑制することを始めて見出した。さらに作製した抗体を用いて、男性、女性の前立腺組織にP1が局在することを組織免疫学的に証明した。 肺においては非線上皮組織に局在して、喫煙により産生が減少する結果、肺胞洗浄液、さらには血清中の濃度が低下することを免疫化学、組織化学的に証明した。肺組織における発現は肺癌で減少し、遠隔転移、腫瘍活動性が高い症例ほどP1の表出が減少する傾向にある。また、気管支喘息では減少、サルコイドーシスでは表出増加があり、今後癌の悪性度、免疫応答特に炎症制御との関連性から更なる追求が必要となる。 2) Basic fetoprotein(BFP):精漿中に大量に存在し、しかも胎盤から精製されたBFPと構造上同一であることを、免疫化学的に証明した。非特異的炎症、腫瘍マーカーとしての意義があると考えられた。 3) PSA:尿中に存在するPSAはすべて遊離型のみから構成される。尿中の基準範囲を設定した、 4) シスタチンC:血清シスタチンCは、一定の割合で血清中に分泌され、血清では重合せず腎糸球体において直ちに濾過されるため、GFRの低下を高感度に反映して血清濃度が増加する、新しい糸球体濾過能を評価するマーカーとして臨床的意義を明らかにした。 5) その他:尿中のIgGの安定性について研究を行い、尿中での分解、および血清中にFcγフラグメントが存在して、見かけ上安定性が維持されていることが示された。
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