研究概要 |
採血後血清を低温に放置すると、補体系が活性化される例がnon-A,non-B肝炎に集中している事が1976年に明らかにされた。申請者らは、CA(cold activation,寒冷補体活性化)を起こす症例がほぼ全例HCV感染を伴っており、HCV感染検体が高率にCAを起こす事を示した。今回、1)低温に血清を放置すると補体価が下がるのだが、それと同時にRFが陰性から陽性になったり、低値から高値になる例が多数見出された。即ち、38例中12例が低温放置によりRF値が上昇した。低温放置後にRF陽性になった血清にモルモット血清を補体源として加えるとRFは再びもとの値に低下する事を認めた。RF測定のための緩衝液のイオン強度をあげると、この現象が、認められない事を見出した。この事はCAを起こすRFが親和性の弱いRFであろうと可能性を示唆する。2)非ホジキンリンパ腫(NHL)49例の中17例がHCV感染陽性であり、ところが可溶性IL2レセプター(sIL-2R)の値を見るとHCV陰性例では一般に言われているように高値を示すが、HCV陽性例では正常範囲に近い値を示し、著しい差のある事を見出した。3)これらの知見から、およびクリオグロブリンに関する欧米での研究から、「HCVがB細胞に感染する事により、あるいはHCVと血清蛋白のcomplexの刺激により、B細胞が増殖し、親和性の低いリウマトイド因子(RF)を産生する。そのようなRFが特に低温において補体系を活性化する。またこのようなRFが肝硬変への進行にも関連している可能性がある」との作業仮説を得るに至った。4)HCV感染症例ではCD5陽性B細胞(外来抗原に対する反応性に乏しいB細胞サブセットで、RFなと自己抗体を産生すると言われている)が増加している事をpreliminaryに認めた。
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