GPI-アンカー型蛋質はglycosyl phosphatidylinositolを介して細胞膜に結合したユニークな構造をもつ蛋白質群である。GPI-アンカー型蛋白質を抗体でクロスリンクすると、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇、細胞増殖が誘導されることから、これらの分子がシグナル伝達機構をもつと考えられている。しかしながら、細胞内ドメインを持たないこれらの分子が、細胞質側にどのようにシグナルを伝えるのかのかは不明である。本研究では、GPI-アンカー型補体制御因子のCD59に焦点をあて、これをモデルとしGPI-アンカー型蛋白質のシグナル伝達機構について明らかにすることを目的とする。 本年度はCD59のシグナル伝達に関与するtransducer分子の検索を行った.細胞としてはCD59を高レベルで発現するヒトHeLa細胞、およびヒトCD59cDNAをtransfecしたCHO/CD59細胞を用いた。Bifunctional架橋試薬(DTSSP)により細胞表面でCD59とassociationしている蛋白質を架橋し、可溶化後、CD59と特異的にassociationしている分子を抗CD59抗体で検出した。CD59分子とともに28-36kDaの架橋産物が認められ、13-18kDaの分子がCD59とassociateしていることが判明した。この分子はtransducer分子として有力視されているCaveolinとは異なっていた。2次元電気泳動、N末配列解析、アミノ酸組成の結果より、この分子はCD59であり、架橋産物はCD59dimerであることが判明した。dimer分子は細胞膜上に存在しておりシグナル伝達に何らかの役割を持つものと考えられる。
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