研究概要 |
我々は既にIgA型の抗リン脂質抗体(APA)測定法を確立し、APA価高値症例についてIgA型(Aと略),IgG型(G),IgM型(M)抗体それぞれの値を測定した。その内、MとA高値,A単独高値症例では下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)下肢深部静脈血栓症(DVT)の症状を有する患者の割合が高かった。ついで通常のSLE患者,SLEで血栓症症状を有する者及びAPS患者,ASOやDVTなど血栓症の患者に分けて各型APAを分析してみたところ、血栓症群ではG型APA値が全症例カットオフ値以下であったのに、A型APAでは82%が高値で、通常SLE群が各分画共高値なのと明らかに異なっていた。以上のことからA型APAは血栓形成と密接な関連が強く示唆された。そこでA型APA高値症例と血小板数や各種凝固線溶系検査との関連を調べてみた。しかし原疾患が慢性的疾患であるため、その血栓発現時を的確に捉えて、検体を採取することが困難であり、その故か異常はみられるものの相関する検査は明らかでなかった。そこでAPS患者でも発現する急性心筋梗塞に着目し、急性な血栓形成を把握できる意味で、逆に急性心筋梗塞患者について全APAを測定後分画測定し、凝固線溶系検査との関連を調べてみた。全APAの異常高値症例は認められなかったが、比較的高めの症例の分画測定したみたところ、やはりG,M型は低値であったが、A型はやや高値のものがみられた。凝固検査ではvon Willebrand factor高値が多くみられたが、A型APA値との相関は明らかでなく、さらに検討中である。血清NO_3^-値もかなり敏感に変動するので、同一患者においても採血時期によって値が異なる。極度にAPA値が高く、血清NO_3^-値が極めて低い症例でも、その後の測定では基準値内に戻っており、血栓形成との因果関係を明らかにすべく、さらに経過を追跡している。
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