【目的】;老人保健施設入所者に監視下に呼吸訓練を行わせ、呼吸器感染による発熱が減るかを検討した。 【対象者と介入方法】;入所者に、入所順に、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)による知能評価を実施した。22点以上の者を対象者とし、封筒法により無作為に、呼吸訓練実施群(訓練群)と対照群に振り分けた。施設で実際に訓練を指揮する職員は看護婦(士)に限り、事前に教育をした。訓練群に該当した入所者は、教育を受けた看護婦の指揮の下で、(呼吸筋力増強プログラム+持久力増強プログラム+咳嗽・去痰訓練)を1セットにして、1回30分、週3日、12週間継続して行った。訓練効果の判定に使うデータとして、体温を毎日、最大呼気流量を訓練回毎、最大呼気および呼気圧を訓練開始時と、以後4週毎に記録した。これらの諸データと医師の診断を総合して訓練の効果を判定した。 【結果】;訓練群(男5、女20名)、対照群(男6、女24名)の基本データの平均±SDは、それぞれ、年齢80.0±7.2、79.7±7.3歳、HDS-Rは26.5±2.5、25.7±2.4点、全期間を通しての体温は36.3±0.4、36.4±0.4℃であった。呼吸機能は対照群の4名で研究開始時に測定できなかったので、データ数は訓練群N=25、対照群N=26であった。開始時、訓練群の最大呼気流量は対照群のそれよりも有意に大きかった(P<0.05)が、最大吸気圧、最大呼気圧は両群で有意差が見られなかった。全研究期間(84日)の2/3以上体温が測定されていた人だけを体温関連指標の分析対象者とした。各人の研究期間中の平均体温+2SD以上を発熱とし、(発熱した日数)/(全体温測定日数)の両群での差を検討した。その結果、発熱日数は両群間で差が見られなかった。分析に際して、明らかに発熱の原因が呼吸器以外にあると思われた場合は除外した。 【結論】この訓練では、老人保健施設入所者の呼吸器感染によると思われる発熱回数を減少させることができなかった。
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